「2円で刑務所、5億で執行猶予」をほぼ読んだ。現在の日本の治安状況、司法制度に関する限りなく実態に近い姿が描き出されていて非常にためになる。以前からこのブログでも書いているが、今でも日本は世界一の安全国家であり、少子高齢化の元、当然のこと、少年犯罪は減少の一途を辿っている。戦後最も殺人事件などの凶悪犯罪が多かったのは皮肉な事にあの「三丁目の夕日」の昭和三十年代前半。今はその半分である。このことから予測されるのは、犯罪の発生率に影響しているのはまず第一に「貧困」ではなかろうか、という事。事実、その問題を作者は多くの統計データを元にして炙り出す。例えば、警察に検挙される二百万人のうち、裁判にかけられて実刑をくらうのは何とたったの三万人、ニ%。作者によると、それを分けるのは財力・人脈力・知力の三つ。それを持たない社会的弱者が犯罪者の実相であり、所謂イメージとしての凶悪犯罪者ではない(いても数値に現れない程度)、それゆえ、社会施策と治安、貧困問題は表裏一体だという結論に達する。残酷に言うと、今の日本社会では社会的弱者は犯罪者になり、その決心がつかない者は自殺するという恐ろしく冷酷な社会になりつつあるという事である。これは経済的な「格差社会」と呼ぶレベルを超えている。作者の言葉だ。「少なくとも『自己責任』という言葉を政治家は使ってはいけない。政治家には、政治の責任を自己責任に転嫁する前にすべきことがたくさんある」実に理に適った意見である。前に読んだ「平成経済二十年史」と併せて、有徳の士は是非読む事を勧める。(ついでに、竹田青嗣の「人間の未来」も)今の日本の危機的状況の認識とその問題点の把握からしか事態は解決しない。嗚呼、勉強したい!